近年注目されているSiCパワー半導体について解説します。また、SiCパワー半導体の現在の市場シェアや該当企業を紹介します。
市場成長が著しいSiCパワー半導体メーカーに転職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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SiC半導体とは?
SiCはシリコンカーバイドとも呼ばれ、シリコン(Si)と炭素(C)で構成される化合物半導体材料です。
バンドギャップがSiの3倍程度、絶縁破壊電界強度が10倍程度、熱伝導率が3倍程度高いという特徴があり、シリコンと同じ耐圧を、より薄い耐圧層で実現することができます。そのため、大きな電圧・電流を扱うパワー半導体材料として注目されています。
パワー半導体とは
電力の変換や制御を行う半導体デバイス。高電圧や大電流を扱えることが特徴で、一般的に定価電流が1A以上の半導体デバイスがパワー半導体と呼ばれる。
さらにSiCパワー半導体は、電力損失や発熱が少ないため、省エネルギー化や機器の小型化にも貢献します。
SiCデバイスは、2001年にドイツのインフィニオン・テクノロジーズがショットキー・バリア・ダイオードを商品化、2010年にはロームがMOSFETを世に送り出したことで実用化が進みました。
SiC半導体の将来性
SiCはシリコンよりも高い電圧に耐えることができ、さらに省電力性にも優れている一方で、シリコンよりも高価なため、市場が限られていました。
しかしテスラが自社EV(電気自動車)に採用したことで、EVへの搭載が加速し今後さらなる成長が見込まれています。
下の図は、パワー半導体の世界市場規模予想を示しています。
SiCパワー半導体の市場規模は、2020年に7億ドルでしたが、2030年には64億5000万ドルまで急成長すると予想されています。
SiC半導体の課題
SiCウエハはSiウエハに比べて製造難易度が高く、製造コストがかかることが大きな課題です。その結果、SiCパワー半導体のコストの中で大きな割合をSiCウエハが占めています。SiCウエハのコストを抑えられれば、SiCパワー半導体もコストダウンすることが可能となります。
さらに結晶欠陥が多く含まれることから信頼性が低いことも問題です。結晶欠陥の少ないSiCウエハの開発や、製造プロセスの継続的な改善が求められています。
それらに加えて特に車載向けなどでは、豊富な製造データの蓄積に裏付けされた高いレベルの信頼性が求められます。
SiCパワー半導体の用途
SiCパワー半導体は、電力損失を抑えたモーター駆動回路や電力変換器を実現させることができます。そのため電子機器の省エネルギー化につながることから、脱炭素化を目指す社会のキーデバイスとして期待されています。
特にEVに関しては、SiCデバイスを採用することで航続距離を伸ばすことができるため、非常に応用が進んでいる分野です。
SiCパワー半導体メーカーのシェア
SiCパワー半導体メーカーのシェアを下図に示しました。SiCパワー半導体は世界の大手4社で市場の91.9%を握っています。
以降、それぞれの企業を紹介します。
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STマイクロエレクトロニクス
スイスのSTマイクロエレクトロニクスが市場シェアトップで32.6%を有しています。
テスラに自社製SiCデバイスが採用されたことで、ビジネスがさらに拡大しています。
イタリアに所有しているSiCデバイス工場に併設する形で、約950億円を投資して6インチSiCウエハの新工場を建設するなど、ウエハとデバイスの一貫生産体制の確立にも力を入れています。
インフィニオン・テクノロジーズ
ドイツのインフィニオン・テクノロジーズが市場シェア23.6%で2位です。インフィニオン・テクノロジーズはSiパワー半導体では世界シェア1位の業界トップ企業となっています。
現在は、オーストラリアのフィラハにある8インチ対応工場でSiCデバイスを製造しています。
最大1兆1300億円を投資して、マレーシア・クリムに業界最大のSiCデバイス生産拠点を建設する計画が進んでいます。
ウルフスピード
アメリカのウルフスピードが市場シェア16.5%で3位です。SiCパワー半導体だけでなく、世界最大のSiC材料サプライヤーとしても知られています。
2027年頃に生産開始予定のドイツ西部のザールランド州の工場は、「世界最大のSiC工場」を目指して建設が進んでいます。
ローム
日本のロームが市場シェア11.1%で4位です。
世界で初めてSiC MOSFETを量産したり、世界初のフルSiCパワーモジュールを開発するなど、SiCのリーディングカンパニーとして知られています。
2022年12月に福岡県のローム・アポロ筑後工場の敷地内に新棟を建設したり、ソーラーフロンティアの宮崎県の国富工場を取得するなど、生産力拡大の投資を加速させています。
また、2025年頃からは、6インチから8インチへの切り替えも予定されています。
2030年頃には、2021年比でSiCパワー半導体の生産能力を35倍に拡大できるとしています。
オン・セミコンダクター
アメリカのオン・セミコンダクターが市場シェア8.0%で5位です。
SiC結晶技術を有するアメリカのGTアドバンスト・テクノロジーズを2021年に買収しました。
SiCウエハ材料からSiCデバイスまで一貫して生産することにより、高い品質を担保できることを強みとしています。
SiCパワー半導体に強い日系メーカー2社
今まで上げてきた企業以外にも、SiCパワー半導体に力を入れている日系メーカーとして、デンソーと三菱電機を紹介します。
デンソーと三菱電機は、SiCウエハの調達のために、アメリカCoherentに共同で1,500億円を出資するなど、両社ともSiCウエハの安定供給にも積極的に手を打っています。
デンソー
デンソーは、自動車部品メーカーとして有名ですが、半導体も1967年から手掛けています。車載向けにSiC半導体の研究を長年続けてきました。既存のSiC単結晶の製造方法である「昇華法」に比べて、成長速度を10倍にしてコストを半減できる「ガス成長法」と呼ばれる技術を開発するなど、SiCの低コスト化への取り組みも盛んです。
レクサスのEV専用モデル「RZ」では、デンソーのSiCパワー半導体を搭載したインバーターが採用されています。
三菱電機
国内パワー半導体最王手の三菱電機は、1990年代前半から国家プロジェクトとしてSiC開発をスタートしました。
2010年にはSiCパワーモジュールを搭載したエアコンを世界で初めて製品化しました。それ以外にも鉄道やFA機器などでSiC搭載による省エネ効果を検証するなどSiC市場に非常に積極的です。
また、熊本県菊池市に建設する新工場の稼働開始予定を、当初の予定から5か月前倒しして、2025年11月にするなど攻勢をかけています。
まとめ
今回は、市場成長が著しいSiCパワー半導体の説明と、主要プレイヤーであるメーカーを紹介しました。いかがだったでしょうか?
市場の急成長の期待から、各社大きな設備投資をしており非常に力を入れている様子を感じていただけたのではないでしょうか?
SiCパワー半導体のような技術革新が続く分野で、エンジニアとして働くことは非常にエキサイティングです。世界初の技術開発に携われる機会も非常に多く存在します。
「前職の経験を、将来性のある企業で発揮したい。」
「SiCパワー半導体に携わって、脱炭素社会実現に向けて貢献したい。」
そういう方はぜひSiCパワー半導体メーカーへの転職をご検討ください。
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